2012/05/09

石狩紀行(ii):ありすcafé


231号線,通称「オロロンライン」と言います.天売島にいるというオロロン(ウミガラス)から取った名前だそうですが,通り沿いはカモメや鳶をよく見かけます.このメインになる通りに出て,今度は北の厚田へと向かうことにする.

ちなみに,このオロロンラインの特に231号線石狩市内の国道は「愛の道:あいロード」という呼び名も普及させようというプロジェクトが石狩市観光振興計画によって実施されていたらしく,「厚田公園展望台」をシンボルとして,

l   i」市名の頭文字
l   「あい風」厚田区で古くから言われる,幸せを運ぶ海からの風
l   「愛冠(あいかっぷ)岬」浜益区昆砂別の海岸にある岬

3つの「あい」を基盤にしたこの呼び名を普及させたいという意向があったらしい.このプロジェクトには我がF女子大学も関わっていたので,今後はできるだけ「あいロード」と呼ぶことにしたいと思います.まぁ,この決意がいつまで続くのかは分からないのだけれど(かなりヘビーなアップルユーザーの私としては,iRoadという呼び名だけは阻止したいのですけれど).

そんなこんなで,231号線を北上し,厚田区まで入ったところ,ちょうど厚田の中心地の手前辺りの小さな郵便局を越えた交差点でちょいとぐるっと左折したところで,ありすcaféという赤色の小さなロッジのような建物が目につきます.

入り口には,猫の顔のような絵が描かれてあって,「café」というからにはカフェなのだろうかという印象を持ってしまうのだけれど,実は手作りの陶器を売っているうつわ屋さん.




実は石窯パン&Pizzeria Rippleという,ありすcaféを少し上った小高い丘の上にあるピザ屋さんに行きたかったのだけれど,あいにくそちらの待ち時間が90分程ということだったので,予約をした後,ちょうど暇つぶしにどこか近辺に行きたいなという時にこのうつわ屋さんに足を運んでみようかという話になりました.

ドアはきちんと手作りの引き戸だったのだけれど,開け方にちょっとコツが必要で,ちょうど引き手の奥の方を持ち上げるような形で引っ張らないとうまくドアが開かないのだけれど,とりあえずそのドアを「とぉりゃ!」という感じで開けると,白いペンキの内装の手作り感たっぷりのお部屋に招待されることとなります.

お店では,店主でかつ実際に工房でうつわを作っている笑顔のかわいらしい女性が迎えてくれるのだけれど,うつわ屋さんでありながら,紅茶や珈琲を支給してくれるとかいうちょっとしたカフェ.飲み物は,手作りのカップで給仕してくれるのだけれど,苦みの程よい珈琲や,女性ウケのよさそうなイチゴジャムを入れた紅茶なんかを出してくれたりします.

実はここのうつわは全て,厚田の粘土を拾い集めて作っているそうで,どれもこれも味があってとてもよい感じです.私は焦げ茶色のカップとそれを載せる器に興味が沸いたのだけれど,同行していた学生さんたちは,明るい灰色のマグカップが気に入ったようす.どうも,所々に見られる斑点がかわいらしく見えたそうで,この手のかわいらしさに気づく感性の鋭さは若い女性ならではのものだなと感心してしまいました.

この店の看板ネコはチャゲという19歳になるお婆ちゃんネコなのだけれど,やはり体力的に厳しいせいか,寝ている時間が随分と長いご様子.実はあまり人に触られるのに慣れていないらしく,人に近づくことはあるものの,人に直接触れる機会は滅多にないらしく,下手に人が触ると怒ってひっかきますよという注意をされたのだけれど,同行していた学生さんの一人にえらく懐いてしまって,自分から頬を膝につけて眠たげな眼をこすりこすりという仕草を見せていました.うーむ,過小評価すべきでないのは,うちの女学生の魅力といったところなのかもしれない.

この小屋は元々は廃屋の暗いうらぶれたものであったらしく,それを店長さんが一から手を加えて綺麗に改修したものだそうで,なんだかその手作り感がヨーロッパの家の雰囲気をじんわりと滲ませていたような感じでした.概観はかわいらしいうすピンク色だし,店内はそこにいる人たちの心を和ませるような白いペンキで,ところどころに焦げ茶色の板でテーブルや椅子が細々とコーディネイトされ,さらには細かい棚があちこちにあり,その一つ一つに手作り感たっぷりのアクセサリーや人形が嫌みのない程度に鏤められてあって,その内観はまるでヨーロッパの家の中にいるような雰囲気がたっぷり.

棚にしている机は基本,厚田の海岸に打ち上げられた流木で,しかも支柱になる枝やカーテンレールは折れた桜の木の枝を使用してあるという,とことんまで厚田産に拘っているという代物.しかも,部屋に立てかけてある時計は,厚田丸という漁船で使用されていた昭和29年のねじ巻き式というレトロなもの.でも,ねじ巻き式の時計とかそういうものって,なんとなく自分の中にある「男の子」の本能のようなものが燻られる気分があってとても気が惹かれる.




元々は廃屋だったので,部屋に入っても特に何の色もない薄暗い雰囲気だったそうなのだけれど,白いペンキをケーキ生地を平らにする時に使うヘラで塗っていくことで,なんとか部屋一面を真っ白にしたという店長さんの苦労話なんかも聞くことができました.しかしながら,実際にイギリスのラブリーな家に住んでいた私の目から見ても,十分にヨーロッパの家の一つと言っても差し支えのないきれいな出来映え.こういう自分の店を全て手作りで仕上げるということにも,個人的に興味が惹かれてしまう.自分も,家を買うぞという気概ができた時には,こういうきれいなデコレーションの家に住んでみたいという気はけっこうありますね.

それで,ソファーに腰掛けて,雨上がりのちょっとひんやりとした外の風景を窓から覗いていると,なんとなく自分がイギリスに帰ってきたかのような錯覚に陥ってしまう.時間の流れがゆったりとしていたイギリスでの感覚をなんとなく身体が思い出している感じがあって,自分の頭の中にある言語チャンネルが日本語に設定されてあるのがなんだか不思議に思われてしまう.そのうち,英語が口をついて出てきそうな感覚すら出てきそうである.これで暖炉の火と,エールビールにスコッチ,キリッと重くて辛口のワインなんかがあると,ちょっとした帰省気分になれるのではあるまいか.日常の些細な雑務で「あーでもない,こーでもない」とか,しょうもない議論をしているのがなんとなくどうでもよくなってくる.って,大学の教員がそんなことを言っていてはいけないのか.たぶん.

そんなこんなで,こんな厚田みたいなところで,90分も時間を潰せなんてどこで何をすればいいんだかと思っていましたが,ここのカフェというか,うつわ屋さんでのんびりしているといつの間にやら90分は経っていたのです.きれいなうつわで飲み物を飲んでいると,そのうちうつわが欲しくなってしまいますが,あいにく残っていたカップは1つだけ.私も買って帰ろうかと思っていたのですが,同行していた学生さんの1人が買いたいということだったので,学生さんに譲る.まぁ,車のある私はまたの休みにでも来ればいいだけの話だし.

というわけで,基本的には喫茶店ではないのだけれど,また一学期の仕事が一通り終わった頃にでも立ち寄ってみたいという気分にさせられるお店でした.落ち着けて,リラックスできる空間だし,まぁ,カップの1つや2つでも買ってお店の売り上げに協力でもすれば,自分のオフィスに置いておけるカップが補充できるし,ちょうどいいのかもしれない.

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