2012/05/07

石狩紀行(i):マウニの丘


はまなすの丘公園の辺り,ちょうど半島の形になっている部分は,石狩市弁天町にあたる.「弁天町」という地名を聞くと,大阪出身札幌市民の私は,大阪環状線にあるちょっと大きな駅名を思い出すのだけれど,「弁天町」という地名自体は北海道にたくさんあるようで,他にも,根室市,函館市,紋別市,増毛町にも「弁天町」はあるみたいである.この石狩市弁天町の由来は,石狩が幕府の直轄になった1858年に建立された八幡神社に起因するようです.弁財天の影響力は計り知れない.

 ちなみに,北海道という大陸にへばりつく細長い形状の半島を見ていると,ついついニューヨークのマンハッタン島を思い出してしまうのだけれど,この場所を「石狩のマンハッタン」と呼ぶのは,やっぱりやめておいた方がいいですよね.

 前回(『はまなす×いそこもりぐも@石狩浜』参照)のインタビューでは,営業していない時に行っていたということもあって,「そうだ,営業している時に行ってみよう」と思って尋ねたカフェがここである.はまなすの丘公園の外れ,番屋の湯の裏手にある海岸に面したこのカフェは,確かに車がなければなかなか来られない場所にあるのだけれど,それでも海岸を眺めながら(そして季節になればはまなすを見ながら)ゆったりとくつろげる静かなカフェである.

 車を止めて,一面木造の1階のドアをくぐると,左手すぐに映画『星守る犬』で使用されたハッピーの犬小屋がある.犬小屋はけっこう大きくて,身体の小さな大人なら入れそうな感じがする.まぁ,ごく普通の日常生活を送っている大人が「そうだ,犬小屋の中に入ろう」とはなかなか思わないと思うのだけれど,同行していた学生さんたちが「入れるかな?」とか言って,屈んでいる姿を見て,ちょっと考えるところがありました.まぁ,この学生さんたちは幼児教育が専門なので,子供の心を失っていないという部分は評価してもいいのだと思う.たぶん.

それから2階に上がると,引き戸があるのでそれを開けると,ガラガラガラーンという鈴の音が勢いよく周囲に響く.来客を知らせる音なのだろうけれど,思わず誰かの家におじゃましているという気分になってしまう.同行していた学生さんたちが「おじゃましまーすって言いたいね」って言っていたけれど,なんとなくその気分は分かるような気がする.一面木造のこのカフェは,なんとなくお店に来たという気分ではなく,人が住んでいる広い家に来たという気分になるのである.それで,さらに階段を上って,3階にまで上がるとようやく店内に入ることになる.




 木造の店内の作りは,優しい茶色が広々としていて,それがガラス戸から見える外の風景といい感じに調和している.フロアの中央には出しゃばらない感じのシャンデリアと,ピアノが一台慎ましやかに置かれてある.店内に入ると,「あぁ,ちょっとゆったりとしよう」という気分になるのだけれど,この種の「ほっこり」感覚を味わうことができるのが田舎のカフェの醍醐味なのかもしれない.都会の,例えばスターバックスなんかもそれはそれでいい場所だと思うことはあるのだけれど,やっぱり周囲に人がい過ぎる感じだし,それに次から次へと座席を探す客が来訪してくると,「ぼちぼちのかなあかん」という気分になってしまって,どうにも落ち着けなくなってくる.逆に,自分たち以外に来客が全くないと,それはそれで落ち着かないというか,自分たちだけに店員の注意が向いてしまうことになってしまうので,なんだか申し訳ない気分になってしまう.しかし,この日は休日ということもあって,来客もけっこうあったのだけれど,別に座席がないというほどのこともなく,「ちょうどいい案配」という感じでした.




注文はレジで先に済ませてしまう前払い方式で,メニューはカフェと軽食といったところ.珈琲とお茶各種,それにジュースや抹茶ラテ(&バニラアイス),それにビールやボトルワインなんかも置いてある(飲酒運転,ダメ!絶対!).それに各種パスタにケーキなど.店長のI山さんがいらっしゃる時には,マウニロールというロールケーキもあるはずなのだけれど,現在産休中ということでロールケーキの方はお休み.

ケーキは無添加の手作りだそうで,この日はスフレチーズケーキとガトーショコラを食べたのだけれど,チーズケーキはコクのあるチーズケーキで口の中で暑い日差しの中で雪が溶けるようにとろけてしまう感じで,ガトーショコラも程よい苦みと豆乳のいい風味が口の中で広がっていくという感じでした.単に場所と風景だけを楽しんでいるという感じではなくて,料理も独自のものを提供しているので,わざわざ足を運んでみる価値はあるのではないかと思う.

フロアをよく見てみると,床の間のように切り取られた一角があり,家族スペースのような所もあります.家族連れがその中に入っていたのだけれど,おちびちゃんが小さなバーをくぐり抜けようとしていました.きっと,広い場所をあちこち散策したいのだと思う.さらに端っこの方には,角机が並べられたスペースもあって,窓際で年配の女性が一人,頬杖をじっとつきながら物思いにふけっておられました.




 この店の用途なのだけれど,景色がきれいなカフェということで,デートにも使えそうな感じだし,子連れの家族も居れば,年配の団体さんやお一人様もいるという雑多な感じでした.特別騒がしいというわけでもなく,ロマンチック過ぎて恋人同士でなければ来店できないということもなさそうで,けっこう気楽に来られる場所なのではないかと思います.車さえあれば.

 それで,この場所に来る途中で,「この近辺,どろぼう禁止」とかいう立て札なんかも見かけたのだけれど,車に同乗している人はぜひ目を凝らして見つけてみてください(ヒント:セブンイレブンの近く).「日本全土で,泥棒が禁止されていない地域なんかあらへんやろ」と思ってしまうのだけれど,もしかすると,札幌辺りから「出稼ぎ」に来るような人たちがいるのかもしれない.個人的には,この種の看板やら標語やらは景観を損ねる以外の役割を果たさないと思っているので,この種のムダな看板や標語は全て取り去ってしまえばいいのになと思う.パチンコやら消費者金融のネオンもそうなのだけれど,日本人も景観というものにもう少し注意を払ってもいいのではないかと思う.「この近辺,どろぼう禁止」という標語を見て,「お,そうだ.この辺りで空き巣に入るのは辞めよう」とか考える泥棒候補が本当にいるのなら,ぜひとも会って,話を聞かせてもらいたいものである.

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