2011/08/02

教育という産業

昨今の私立大学は,推薦で下手をすると半分くらいの学生を集めるという手段を取っています.

高校の成績は人並み以上にあり,人格が破綻しているという人でもなければ,だいたい簡単に合格できてしまうのが現状である.

というわけで,受験勉強に一番熱が入る年末年始に勉強しない学生さんたちがたくさん入学してくるので,そういった学生さんたちにいかにして勉強していただくかというのは,中堅以下の私立大学全体が抱える悩みの種.

そういうわけで,入学前準備講座というものに予備校もぼちぼち参入してきたみたいで,T(東(つまり天竺と逆方向)に進む(授業料が)高い学校)という,業界では実は評判のよくない予備校さんの話を聞いてきました.

単刀直入に言えば,全ての話が作り物っぽくて,しかもかなり嘘をついていらっしゃいました.

まぁ,営業さんも元業界関係者が混じっているとは微塵も想像していなかったのかもしれないけれど,「200人以上の講師を抱えている」とか,「優秀な添削者たちがたくさんいる」とか,全部,デタラメやん.

悪いけど,あんたんところの予備校って,生授業をする講師が両手と両足があったら全教科数えられて,添削者とか普通にその辺の大学生のバイトさん雇ってますやん.イマドキはバイト情報誌なんかも簡単にネットで見られるのに(確認した).

何でそんな見え透いた嘘をつくかな.

それと,誰もわからないとか高をくくっていたのかもしれませんが,少なくとも英語の教材のレベルが極めて低い.

デタラメだ.

数ページ読んだだけで,知識がないというか,英文法の体系が頭に入っていない人が書いたということがはっきりと分かる.

こんなもん,うちの学生さんたちに金払わせて読ませられませんわ.

定期的に学生さんのところに電話をかけて,添削文章をできるだけ褒めたらそれだけで勉強するとか,DVDを見るとか,ちょっと俄には信じられませんね.

まぁ,優秀な人たちを雇うにはそれなりにコストもかかるわけで,システムに粉飾がないというか,教育のどこにお金をかけて,コンテンツを常に批判される場所にさらして,適宜,開発を行っているという予備校は,基本,KさんとSさんだけなんだろうと思う.

これは,数年にわたって蓄積された「信頼・信用」だし,それに毎年自分が相手にしている学生さんたちに大学受験指導を行っている,進学校の先生方の毎年の評価をクリアし続けていることによって形成された一定のクオリティなのであると思う.

教育という実態のないものに対しては,この種の信頼感は確実に資本価値となりうる.

実質,やっていることに大差がなくても,日本では東大,アメリカのハーバード,イェール,プリンストンの御三家,イギリスのオックスブリッジで教育を受けたということに,みんながそれなりの価値を置いているということは,この種の教育を提供している集団に対する信頼感と等価であると思う.

また,そういった教育は基本,対人関係を主眼に置いているものである.

人は,教育を施してくれるレクチャラーと対面することができ,人と人との息づかいが共有できるという実感に対して,対価を支払うのである.

授業料が高くても,人が払うことを(あまり)厭わないのはそのためである.

単に知識を仕入れるだけであれば,本でも何でも購入すればすむ話なのである.

例えば,マイケル・サンデルの講義を直に聴くためにハーバードの学生は勉強し,お金を払っているわけである.単にサンデルの思考と授業内容を知って満足するというのであれば,巷の本とiTunes Uと論文を購入するなり無料でダウンロードすれば済む話なのだ.

ある人,Aがサンデルの講義にハーバードで直に参加し,討論した上で単位を取得した場合と,BがiTunes Uで全て講義内容を覚えたという場合,前者に価値が置かれるのはそのためである.

話を戻して,新規参入をしたければ,それなりの覚悟と自信と,それと内容のあるソフトとハードを持って来てもらいたかったものである.

人を動かしたいのであれば,教育という現場であれば,やはり人が必要であると思う.

優秀な人材を一定数育て,そういった人たちを学習前教育に投入してくれるのであれば,より魅力的な商品が提供されると思う.

現在の予備校界の現状を見て,対面授業に重きを置いたKさんが躍進,なんだかんだで東京三菱他に買い手がついて,倒産のピンチを免れたSさんも対面重視,衛生授業やDVD重視のYさんやTさんの惨状を見れば,自分たちでよく分かっているだろうに.

単に「ビジネスチャンスだから」といって,適当に今あるコンテンツを貼り合わせて,DVDを新たに制作して持って来て,「はい,そうですか」とすんなり首を縦に振るほど,大学教員もバカではない.

営業は押し,と思っているのかもしれないが,それは違う.

大学も自分のところで預かる学生にお金を払わせて勉強させる以上は,それなりの信頼感がなければ投資をすることはできない.

その種の信頼感を確立するに足るシステムを作って持ってこられれば,もちろん,我々も諸手を挙げてお金を出すことになるであろう.

まぁ,私の本務校が今も普通に生きているのは,先人達の積み重ねてきた伝統があるからなんだろうけど.

って,いつまでものんびりしていて大丈夫という保障は今後もありませんけどね.

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